2026年9月29日(更新)
多くのソフトウエア開発組織と開発当事者が、ベストプラクテスモデル、世界標準ISO、CMMI、6シグマ、PMBOK、スクラムなどの知識体系、リーン開発、スクラム、アジャイル手法やマニフェストなどを参考にして、長期に亘り、品質向上及び生産性向上に取り組み、大きな成果をあげてきました。
しかしながら、約70%の開発プロジェクトの目標の未達成状態が続いています。これが開発当事者たちのスキル不足によるものであると報告しています(注1、2、3)。また、「設計やコードの生成をAI Agentにさせる」と爆速で生成された設計やコードの品質レビュー方法や、このAI出力をその上流と下流の作業に接続する方法が不明です(注4、5)。これらは、開発プロジェクトの開発当事者の関わり方が一層複雑になるという懸念があります。
では、上記の課題を解消できる新しい開発プロセス、支援ツール、教育トレーニングにはどのようなものが考えられるでしょうか?
目標は、現在報告されている多くのリワークとシステムテストのオーバーフローの課題を解消して、その削除できた分の時間を、現場当事者の新技術対応の検討や新システムと教育とQoL向上に活用することです。
先ず、開発プロセスを詳細レベルまで分かりやすく定義して、正確に実行できる必要があります。例えば、開発当事者が不具合に気づいた場合、その上流の適切な作業を同定して修正と改善(再発防止)を行う、また、開発進捗を正確に判断(計算)できることが重要です。
開発活動の最小単位を素活動と呼び、開発の基本作業を行うための論理的に一列に並べた素活動の組みを開発ステップと定義し、この素活動や開発ステップに、その作業時間、成果物規模、不具合と欠陥情報から成る「基礎データを記録する」素活動を追加します。
基本作業を論理的に一列に並べで開発ライフサイクルを構成(定義)します。これが開発スクリプトです。この開発スクリプトの開始から終了まで順々に開発ステップを実行すると、目的の成果物が得られるというシンプルな仕組みができます。
PSP/TSPプロセスと資料一式がこの開発スクリプトを初めて実現しました(注8)。エンジニア単独の開発プロジェクトから10人規模の開発プロジェクトまで適用できます。リーダーシップチームのもとに複数チームを配置する大規模開発も40人規模程度まで拡張可能です。
ネクストプロセス研究所から、開発エンジニアが使うPSPプロセスと資料一式とPSP教育トレーニング、開発チームが使うTSPプロセスと資料一式とTSPチームコーチングを提供しています(注6、11、12)。
認定PSPインストラクターは開発エンジニアリング能力、開発マネジメントの実践力、そして、受講エンジニアをフォローするマインドを持って、エンジニアがPSPスクリプトの基本原理と使い方を学び、開発に失敗しない能力(開発コンピテンシー)を身につけて、自らソフトウエア開発に取り組めるように、PSP教育トレーニングを提供します。
この教育トレーニングでは、開発の基本作業である「要求機能の定義」、「見積もり」(注13)、「戦略的計画立案」、「開発」(「設計」、「コード」、「テスト」)、「品質レビュー」、「進捗追跡」、「予測」のPSP基本スクリプトを実行して修得します。
今回の「要求機能の定義」トレーニングでは、要求機能をよりシンプルな単機能の組みとして見つけて、確実に実装できる戦略を同定する体験をします(注13)。
これで、若手エンジニアが、数KLOC規模の開発の計画立案から開発報告の作成まで単独で行い、開発進捗と品質の状況を他のエンジニアに短時間で説明できます。後述の伴走型AI機能が自動表示する開発経過と開発データのサマリーをそのまま使用できるためです。シニアエンジニアは、若手エンジニアにそのような開発作業をいつでも安心して依頼できます。
伴走型AI機能をもつ支援ツールを導入します(注14)。開発当事者が記録した基礎データを自動分析して、開発活動と成果物の進捗、品質、予測(見積もり)の情報を自動表示します。「進捗」は目標に対する出来高、「品質」はリスクの高い活動や成果物の情報です。「予測」は、見積もり値と指定した確率に対して、その実績値が収まる上限値と下限値を自動表示します(注13)。
この伴走型AI機能は、規模見積もり値を与えると、以前の開発実績データも参照して、開発開始時に、開発計画と品質計画を自動生成します。開発当事者はその計画内容を確認して、開始後に想定される変更への対応のために、計画内容の調整が可能です。
実行開始後は、進捗と実績を反映して、開発計画と品質計画を自動更新するので、開発当事者は、品質リスクの高い活動や成果物と予測の情報に基づいて、フェーズ完了確認や後続フェーズに対する検討ができます。
開発プロジェクト成功の要は『多才なチームメンバー全員がメンバーの持てる能力と資源(時間)を、プロジェクト目標あるいは開発目標の達成に向けて意欲的に組み立てて、最短期間でプロジェクトを実行することです。ここで、開発チームメンバーのエンジニアはPSPトレーニングを修了していることが必要です。
TSPプロセスとその資料一式は、エンジニア、管理者、支援部門代表者が開発チームを構築してそのチームマネジメントを行うために使用するスクリプトです。
認定TSPコーチがこのスクリプトに従って、自律チーム構築からプロジェクト完了まで、チーム運営とパフォーマンスをモニターしながら、チームとチームリーダが必要な改善を行うように支援を提供します(注8、9、11、12)。これで、開発チームが開発進捗とシステム機能品質のマネジメントに取り組むことができます。
小規模な実プロジェクト(5人規模で4ヶ月程度)を選び、認定TSPコーチのガイドに沿って、TSPチーム構築を実施します。開発プロジェクト目標や要求をチームで共通理解した後、TSPチームの役割分担と作業分担を取り決めて、効果的にチームワーキングができる自律チームの実現が目的です。
チームメンバーは、プロジェクトとチーム目標の設定、要求機能と開発戦略の策定、計画立案、チーム役割と開発作業の分担、チームルールを調整して決めます。これらの開発に関係する作業のほとんどがPSPで学んだ内容になります。
チームリーダーは、チーム作業の分担・統合、整合性、実行可能性、外部への依存の作業をリードして確認し、必要ならば、これらの作業についてコーチングを提供します。最後に、チームメンバー全員がチーム計画案について合意してコミットしているかを確認します。
この中でも、開発プロジェクトを期日と予算通りに完了するための現実的で達成可能なチーム計画案の立案は大仕事で複雑です。プロジェクト目標設定は、計画(開発作業内容、見積もり、計画、作業分担、品質とリスクの検討、チームメンバーのスキルや作業可能時間など)に依存し、一方、その計画は設定する目標に依存します。チーム全員で取り組むこの謎解きガイドはスグレモノです。
次に、中規模実プロジェクト(10人規模で6ヶ月程度)を選択します。ユーザ代表や上級管理者からのビジネス目標と開発目標をプロジェクト戦略と計画に反映して、その実行可能性(目標達成)を検証し、上級管理者と重要関係者へ提案します。その承認を得られると直ぐに開発を開始します。
TSPプロセスは、多様なプロジェクト形態でも利用可能です。単独開発プロジェクト、機能的組織下または海外開発拠点を含む分散開発(PSP/TSPは国際共通言語!)、更には、多重チームによる大規模開発では上位チームとしてリーダーシプチームを構成して、チーム構築と開発プロセスと開発計画の定義とマネジメントをダイナミックに行うことが可能です。
自律エンジニアと自律チームからのフィーバック例(注8、9、10、11、12)です:
• 要求機能を定義して計画を立案した後は、計画通りに開発できた
• 予想以上の貢献ができた、計画内にとどまることができた
• 作業欠陥をテスト前に60~70%除去し、以前に比べてテスト期間を30%短縮した
• 他のチームメンバーからの協力をタイムリーに得られた
• プロジェクト作業に集中できた
• プロジェクトを繰り返す度に品質を向上させた、など
これらの実績とフィードバックコメントから、以下がわかります:
• テスト期間が約3割短縮されるので、エンジニア教育と先進技術の検討ができる
• 計画の信頼性が高く、開発に集中できる、ビジネス信頼性を維持できる、
• 互いにタイムリーにサポートし合い、開発当事者のQoLを改善できる
以上から、長年かけてベストプラクテスや知識体系を理解しなくても、PSP/TSPスクリプトを活用すれば、開発当事者や管理者は、迷わずに、容易に、高品質ソフトウエアを開発できることが分かります。
短期間に育成できる「自律エンジニア」と「自律チーム」の実現(育成)がキーです。認定PSPインストラクターと認定PSPチームコーチがその初期の育成を支えます。ビジネス要求にも素早く応えて、高品質なシステムを最短期間・低コストで開発が可能になります。
是非とも、PSP/TSPのご利用をご検討ください。
AI agentの成果物生成を含めた開発プロセスを定義する場合、PSP/TSPスクリプトが良い参考になります。特に、開発プロセスの品質と最終成果物の品質のレビューの支援に役立ちます(注4、5、7)。
自律エンジニアと自律チームの育成については、当社の認定PSPインストラクターと認定TSPコーチがご支援いたします。ご連絡いただければ、プロセス診断や導入についてのご提案を差し上げることができます。
以上の導入を加速するために、当社のPSPマスターインストラクタとTSPメンターコーチが皆さまのインストラクタとチームコーチを育成いたします。PSPインストラクタトレーニングとTSPコーチトレーニングをご参照ください。
尚、オンサイトでのセミナーやトレーニングやコーチング提供を希望される場合、費用効果の高いオンサイト料金をご提案させていただきます。是非、ご検討ください。
詳しくは、「TSPプロセストレーニングの目標」ページを、次に「TSPコースご紹介」ページをご覧ください。
セミナーやトレーニングの受講をご希望の場合は「受講のお申し込み」ページまで、説明会のご希望やご質問については、「お問い合わせ」ページへお知らせください。
以上
(株)ネクストプロセス研究所
秋山義博 Ph.D., PMP
https://www.next-process.com
(注1) 一般社団法人 日本情報システム・ユーザー協議会(JUAS) 企業IT動向調査報告書 2022(2021年度調査)。約1400の開発プロジェクトの調査で、計画時の考慮不足、仕様変更、スキル不足、リソース不足などの理由で目標を達成できなかったと報告している。また、同ユーザー企業
ソフトウェアメトリックス調査 【システム開発・保守調査報告書】2020年版では、ユーザ受け入れテスト〜サービスインのフェーズで検出する欠陥密度の目標値が0.91(以下)と高い値を設定している。
(注2) Chaos Report by Standish Group 2020
https://thestory.is/en/journal/chaos-report/
(注3)座席予約システムおよびイベントチケットシステムのダブルブッキングトラブルを現地スタッフが対応している、菓子販売会計システムが返送処理未対応のため、現金支払いに置き換えている。
(注4) Anthropic Claude Code Docs
https://code.claude.com/docs/ja/overview
ソフトウエア開発の作業をA I agentに投げて、要求定義、設計、コード、テストケースやデータを出力させて、レビューをそれぞれのReview
agentにさせることが提案されています。
(注5)People who use AI may pay a social price, according to new psychology
research, Eric W. Dolan,
https://www.psypost.org/people-who-use-ai-may-pay-a-social-price-according-to-new-psychology-research/
(注6)(株)ネクストプロセス研究所は2018年までの15年間に亘りカーネギーメロン大学ソフトウエアエンジニアリング研究所(CMU/SEI)のプロセスマネジメント部門の研究員として、CMMI、SCAMPI、PSP/TSPの開発とパイロットに参画し、これらのグローバル展開の重要性を学びました。また、友人の塚田修氏が、トヨタ製品開発システム(ジェームズ・M・モーガン、ジェフリー・K・ライカー(著)、稲垣
公夫(翻訳))、ひらめきの設計図(ホンダ久米是志著)を紹介していただきました。
(注7)Gartner、AI時代に求められる日本企業の人材育成に関する見解を発表、https://www.gartner.co.jp/ja/newsroom/press-releases/2026-08-27-dw-digital-skill-in-ai-era
(注8) カーネギーメロン大学ソフトウエアエンジニアリング研究所が研究開発し実用性を確認したPSP/TSP (パーソナルソフトウエアプロセス/チームソフトウエアプロセス)は、Software
CMMの提唱者 Watts S. Humphrey博士がリードして開発・検証を行い2001年に発表しました。これをボーイング社やマイクロソフト社など多くの企業が実証し、この功績に対して、2009年に米国大統領からHumphrey氏にthe
National Medal of Technologyを授与されました(Carnegie Mellon Software Engineering
Institute’s Watts Humphrey Awarded Prestigious National Medal of Technology
(cmu.edu))。CMM、PSP、TSPは米国カーネギーメロン大学のサービスマークです
(注9)例えば、開発プロセスの改善には、欠陥の「本当の原因」を正確に見極める開発エンジニアリングの基礎力が必要です。例えば、「要求理解の間違い」だった場合、計算結果が正しくないという不具合を「コードの計算式の欠陥」として修正するならば、解決にはなりません。多くのエンジニアがこれに気づけないことがあります。PSPインストラクターは、エンジニアと欠陥記録を一緒にレビューすることで、こうした原因の正確な理解と正しい修正をサポートします。別の例として、複雑な業務アプリケーションシステムの場合は、ファイルやデータベース、並列処理を介した不具合と欠陥モジュールの同定と修正と再発防止のためのプロセス改善やアーキテクチャ設計などは大変に面白い反面、複雑な作業になります。“failure
is not an option”の世界です。一方、インターネットを介する不具合と欠陥に関しては“failure is not a failure”(TCP/IPの原理)なので、“Move
fast and break things”(Meta)だそうです。k8n利用でも心配です。
(注10) Caper Jones, Software Engineering Best Practices: Lessons from Successful
Projects in the Top Companies, 2009/11/5
(注11) 日本のTSPユーザの成果、エンジニアデータはトレーニング・クラスのデータです。CMU/SEI主催TSP Symposium報告(2006年〜2014年)、また、大学院学生が実施するTSPiプロジェクトも同様です。
(注12) (株)ネクストプロセス研究所は2007年よりCMU/SEI 戦略パートナーとして この取り組みを開始し、米国、日本、中国、韓国の企業や子会社の多くのエンジニア、管理者、および、日本の大学の大学教員と学生向けにセミナーとトレーニングと実プロジェクト支援を提供しました。
(注13) ソフトウエア機能の規模見積もり値を一つの数値で与える習慣があります。しかし、この見積もりが当たる確率は常にゼロなので、この見積もり使う習慣を止める必要があります。PSPの見積もり原理は、エンジニアが見積もりたい機能に同じエンジニアが既に開発した同じ性格の機能(を3個以上(できれば4、5機能)集めて、その散布図(見積もり値、実績値)を作成します。この散布図を使って、回帰線と「希望する確率」に対する予測範囲(例えば確率70%のデータ対が収まるデータ分布の上限と下限の幅)を計算します。エンジニアの見積もり値に対して、回帰線上の値がバイアスを取り除いた見積もり値、そして、この値を中心にした予測範囲の領域内に、70%の確率で実績値が収まると期待される、という訳です。見積もりの経験を重ねると、データ対を選び直して、より精度の高い見積もりが得られるようになります。非常に簡単・有効です。ほとんどの場合、実績値が見積もり値の10%以内に収まるように改善されます。
(注14)外部のA Iサーバーは不要です。このA I機能は個人またはローカルサーバー上に支援ツールとして提供されます。また、エンジニアの個人情報を保護できます。
Copyright ©2023-2026 Next Process Institute Ltd.